2025/01/09 18:42
苔庭を造る際は、栽培した苔を移植する方法が一般的な手法となっています。しかしながら、種苔を播種し現場で苔を育てるという方法も存在します。今回は、現場で苔を育てる方法について検討していきたいと思います。商品ページはこちら
なぜ現場で苔を育てる方法が一般的でないかというと、次の3点があります。①施工する環境をシビアに読む必要がある ②管理の手間が掛かる③綺麗な苔庭になるまで時間が掛かる。この項目について以下説明していきます。
①施工する環境をシビアに読む必要がある
栽培した苔を植栽する際も環境を読む事がとても大切なのですが(詳しくはこちらの記事)それよりもシビアに環境を読む必要があります。土地のポテンシャル・建物との関係性・他の植栽が作る環境などを考慮します。また、栽培した苔の場合は基盤の上に苔を発芽させているので施工場所の土壌についてはあまり注意を払わなくても大丈夫なのですが(極端に水はけが悪い場合を除く)現場で育てる場合は特に気を使います。必要に応じて土壌の改良を行う場合が発生します。また、冬季に霜柱が発生する場所においてはあまりおススメはできません。せっかく苔が発芽しても、霜柱で苔が浮いてしまい剥がれ落ちてしまいます。実験を行っている試験庭では霜柱が発生する場所に苔種の播種を行い、およそ4年経過を観察していますが最初の2年間くらいは霜柱で苔が浮いて一部剥がれてしまっていましたがその後は霜柱の発生が少なくなり現在は殆ど発生しなくなりました。予想ではありますが、苔が繁茂し苔が水分を受け止める量が増え、土壌の水分量が少しずつ少なくなり霜柱の発生が抑制されてきた。若しくは、苔が布団の役割となり凍結するほど土壌の温度が下がらなくなった等が考えられます。試験庭では霜柱が落ち着いた事は事実ではありますが、別の場所(試験庭がある場所よりもだいぶ寒い環境)においては苔が繁茂していても毎年霜柱が発生しているという事実も存在します。この事から、基本的には霜柱が発生する場所は避けた方が安全であると考えます。
②管理の手間が掛かる
イメージとしましては、私たちが生産圃場で行っている管理をご自身で行って頂くかたちになります。定期的な管理は以下の2点となります。
1.水やり
施工する環境の空中湿度のポテンシャルによって水やりの頻度は変わってきますが、基本的には水やりの手間は必須と考えておいてください。特に、施工後の1カ月程度は一日おきくらいの頻度で水やりを行うことにより新芽(再生芽)の発芽を早める効果があります。新芽を出来るだけ早く出したい理由としては、種苔の状態で新芽が出ない期間が長くなると新芽の発芽率が下がるというリスクがあるからです。新芽が出て全体的にうっすら苔が生え揃ったら、苔が乾燥し葉を閉じるくらい(休眠という)のタイミングで水やりを行うくらいに頻度を減らしていきます。1~2年程経過すると、苔が密集してきます(コロニーという)。コロニーが形成されてくると、苔同士の間で水分を蓄えることができ保水量が増えてきます。ここまで生育すると、水やり頻度は少なくなってきます。管理としては、休眠して1週間くらい雨が降らなければ水やりを行ってもらえれば問題ないです。広い面積で、手潅水が難しい場合におきましては自動散水装置を導入することで水やりの手間が簡略化できますので必要な場合はご相談ください。また、湿度が高く安定している場所(軽井沢等)の現場では基本的に水やりは行っておりませんが綺麗に苔が生え揃うケースもあります。

(軽井沢の現場で施工後3年経過)
2.雑草の管理
雑草の管理は必須です。小さな面積でしたら手で管理してもらえればと思いますが、広い面積の場合は除草剤での管理をお勧めします。除草剤についてですが、必ずプリブロックスを使用してください。グリホサート系も使えますが、苔の種類によってはダメージが出ますので使わない方が安心です。苔が生え揃うまでの間は雑草の管理頻度は高いですが、2年程経過し苔のコロニーが厚くなってくると次第に雑草の発生は緩やかになってきます。
③綺麗な苔庭になるまで時間が掛かる
施工場所のポテンシャルにもよりますが、綺麗な苔庭に育つまでに2~3年程時間が掛かります。すぐに苔庭を造りたい場合は、苔シートを施工することをお勧めします。